冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 残業は一時間以内と決めているので、午後七時前には会社を出た。

 一応まだ、あのカップルに尾行されていないかは意識している。帰宅する人の波にサッと目を走らせたが、それらしい人物はいない。もっとも髪型やファッションをあの日と大幅に変えられてしまったら、もう判別できない気もするが。

 ちょうど三十分で自宅マンションに到着した。部屋に入る前にポストを確認する。なにも入っていなかったが、もともと届いていないのか盗まれているのかはわからない。

(やっぱりオートロックマンションを選ぶべきだったかな)

 高校は全寮制、大学時代は学校の紹介してくれる寮に入っていた。だからこのマンションは就職と同時に借りた。家賃が手頃なぶん、セキュリティは甘い。

 とある理由により蛍はお金には困っていない。自分名義の預金口座に結構な額が入ってはいるのだ。

(今は仕事も落ち着いているし、払ってしまった更新料はもったいないけど引っ越しを考えようかな)
< 30 / 219 >

この作品をシェア

pagetop