冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「海堂治郎。君にとってはクソみたいな父親かもしれないが……この国には必要な人間だ。政治が揺らぐと国が乱れる。俺たち警察はそれを阻止するのが使命だ」

 蛍も子どもではない。彼の言いたいことはよくわかった。治郎は政治の中枢にいる。彼になにかあった場合の影響ははかりしれないものなのだろう。

 それに赤霧会のような組織が好き勝手に暴れることも、警察としては絶対に許しておけないこと。大事になる前に速やかに対処したいのだろう。

(つまり私が我を通すことは、政界や警察の足を引っ張ることになるのね)

 蛍個人としては到底納得できないが、イエスと言わざるを得ない状況なのかもしれない。認めたくはないけれど……。

「あの! 同居も結婚も私にメリットがあることは理解できました。でもあなたは? 官僚は仕事のためなら結婚までするんでしょうか」

 いくら高給取りだからといって、そこまでしなくてはならないのだろうか。

「君の件はプライベートとして引き受けてる。霞が関の人使いの荒さは事実だが、さすがに結婚を強要するほどブラックじゃない」
「……プライベート」

 オウム返しにつぶやいた。
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