冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「なら、なにも問題ない。すべて解決したら離婚すればいいさ」

 結婚も離婚も左京が語ると、ものすごく軽いものに思える。彼は気にしないのだろうと薄々理解しながらも一応聞く。

「戸籍にバツがつきますよ?」
「戸籍にバツ? それで君の父親に貸しを作れるなら大歓迎だ」

 左京はもう覚悟を決めている。とういより、もとより悩みもしなかったのだろう。あとは蛍が答えを出すだけだ。

「でも結婚って……」

 蛍の顔が曇る。左京ほどお気軽には考えられない。

「あぁ。興味ないってのはポーズで、本当は運命的な結婚に憧れでもしてた?」

 揶揄するような左京の口調に思わずムッとする。

「そんなことはありません!」

 挑発にのせられたと気がついたのは、そう言い返したあとだった。

「なら決まりだな」

 彼は大きな手を差し出す。

「君は自分の身を守るため、俺は出世のため。俺たちはいい夫婦になれる」

 完全に退路を塞がれてしまった蛍は渋々ながらその手を握り返した。

「……よろしくお願いします」

 それからふと、蛍は彼に尋ねた。

「もうひとつ、質問してもいいですか?」
「どうぞ」
< 65 / 219 >

この作品をシェア

pagetop