冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「私がバレエをしていたこと、どうしてわかったんでしょうか」

 京都で彼に言い当てられたのだ。あのときは蛍の素性など知らなかったはずなのに、なぜだろうか。

「あぁ」

 彼は楽しそうに笑い、「ちょっとそこに立ってみてくれ」と言った。蛍はソファから腰をあげて彼の前に立つ。

「それ」

 ネイビーのタイトスカートからのぞく蛍の膝を彼は指さした。

「そうやって膝を外に向けるのはクラシックバレエを習っていた人間の癖だと聞いたことがあってね」

 言われて蛍はハッと自分の足元を見る。踵をぴったりとつけてつま先を開いた状態、バレエでは一番ポジションと呼ばれる形になっていた。ちなみに膝を外に向けるのはターンアウトといって、これもバレエでは基本の姿勢だ。

(長年の癖って抜けないものね)

 まっすぐに立てと言われると無意識にこの姿勢をとってしまうのだ。京都でもそうしていたのだろう。

「警察の方って、こんなところまで観察するんですね」
「いや。あのときは綺麗な脚だなと自然と目がいっただけだ」

 蛍の頬が赤く染まる。

「セ、セクハラです!」

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