冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「……真実じゃないですか」

 蛍が冷たい眼差しを送ると彼はクスリと笑みをこぼした。

「まぁな。そういうわけだから、蛍も信用できる人間以外には裏事情は黙っておいてくれ」

 当然のように『蛍』と呼び捨てされるのにはまだ慣れないが、その頼みは了承する。

「今のところ、誰にも話すつもりはありません」

 相談するとすれば相手は美理しかいないけれど、なにをどう説明すればいいのか自分でも全然整理できないので当分は無理そうだ。

(余計な心配をかけたくないし)

「君の護衛はあくまでもプライベートのつもりだったが、赤霧会絡みなら……と俺がこの件を最優先に動けるよう上司も配慮してくれた。鬱陶しいだろうが、可能なかぎり君のそばにいる」

 その言葉どおり、彼の帰宅は思っていたよりずっと早い。それに必要になれば電話一本で駆けつけてくれるボディガードも契約されている。ここまでしてもらえれば、赤霧会の恐怖も薄れる。

「約束はきちんと守ります。ひとりで出歩いたりはしません」
「あぁ、頼むぞ」

 それから彼は思いついたように尋ねてきた。

「一応聞くが、結婚式や新婚旅行はなしでいいか?」

 蛍は思わず苦笑してしまった。
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