冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 決して実光をかばうつもりはない。だが暴力団への締め付けが厳しくなったのは、いわゆる暴対法が施行されてからだ。

 それまでは堅気の世界にも当然のように彼らは入り込んでいた。力のある政治家なら、多かれ少なかれ繋がりはある、そういう時代だった。

「ですが、赤霧会は内部抗争で弱体化。ちょうど世論も暴力団に厳しくなりつつあって、実光は手を引いたようですね」
「切られたことを恨みに……はさすがにちょっと弱いだろうな。それをやるなら実光が生きている頃にやっただろうし」

 島たちも左京と同意見のようだ。

「うちでもその意見が多数派です。犬伏は、面子や義理を大事にする昔気質のヤクザってタイプじゃないですしね」
「そうだな。もっと即物的な男だろう」

 目の前の金や利害のみで動く人間、左京はそう分析していた。

「とはいえ……ないと決めつけるのもよくないか。人間の感情なんて、結局は本人以外にはわからないものだし」
「なんといっても相手はヤクザですしね~」
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