冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
　蛍の境遇を知ってしまうと治郎によい感情は抱けない。だが、それを表に出すのは島の言ったとおり左京らしくなかった。

「ご結婚で、彼は菅井さんの義父になったわけでしょう。俺としてはこっちの因縁も興味深いなぁ」

　彼の探るような視線が絡みつく。

「元とはいえ、上司を監視対象にするな」
「対峙した人間は全員疑えと教えてくださったのは菅井さんじゃないですか～」

　左京のにらみをものともせず、島はニヤリとする。人畜無害なオーラのおかげでついつい忘れそうになるが、彼は輝かしい功績を次々と残し警視庁内では『ノンキャリの星』と称されている男なのだった。

「実際どうなんですか、新婚生活は」
「普通だ」

　と答えるよりほかにないだろう。

「こっちでは、菅井さんが出世のために戸籍を売ったと噂ですよ～。菅井さんならやりかねないと思ったので、俺も否定はしませんでしたが」
「否定も肯定もしなくていい。理由はどうあれ俺は結婚した。事実はそれだけだ」

　ヤクザと対峙しても顔色ひとつ変えない左京が動揺しているのがおもしろいのだろう。

　島はにんまりと目を細めた。
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