スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「あ、分かったかもです」
奈央子が即座に私の思考を汲み取り、上手く言葉をつないでくれた。文乃さんを納得させつつ、自分の発言にさえ狼狽えている頼りない先輩をフォローする。
「違う名字を名乗った時はちょっとびっくりしましたが」
そうなのだ。しかし貴博さんのことは「兄ちゃん」で、これが単に親しみを込めた呼称である可能性は即刻奈央子が潰している。続柄が確定したのであとはどう解釈するか、ということになる。
「あれは当てつけだと思うわ」
「でも、お兄さんの彼女が気になって冷やかしにくるって仲良しですね」
触れた以上は踏み込んでいくのが彼女のやり方らしい。そのさらりとした口調のおかげか母親の愚痴めいた言葉が、出てくる。出てくる。
「養子といっても先のことが決まっただけで、あの子はまだウチにいるのよ。せめて大学くらい決まってからでないと、とてもじゃないけど送り出せないわ」
紅茶とケーキも燃料投下となったのか、文乃さんは段々と饒舌になっていく。そこへ奈央子も軽快に相槌を打つ。
「ということは、貴晴くんは高校生ですか」
「いいえ、二十歳の浪人生」
大方の予想通り、貴晴くんは実の伯父の後継者になる道が約束されているらしい。その割に彼は一歩目から盛大に道を踏み外しているという。
奈央子が即座に私の思考を汲み取り、上手く言葉をつないでくれた。文乃さんを納得させつつ、自分の発言にさえ狼狽えている頼りない先輩をフォローする。
「違う名字を名乗った時はちょっとびっくりしましたが」
そうなのだ。しかし貴博さんのことは「兄ちゃん」で、これが単に親しみを込めた呼称である可能性は即刻奈央子が潰している。続柄が確定したのであとはどう解釈するか、ということになる。
「あれは当てつけだと思うわ」
「でも、お兄さんの彼女が気になって冷やかしにくるって仲良しですね」
触れた以上は踏み込んでいくのが彼女のやり方らしい。そのさらりとした口調のおかげか母親の愚痴めいた言葉が、出てくる。出てくる。
「養子といっても先のことが決まっただけで、あの子はまだウチにいるのよ。せめて大学くらい決まってからでないと、とてもじゃないけど送り出せないわ」
紅茶とケーキも燃料投下となったのか、文乃さんは段々と饒舌になっていく。そこへ奈央子も軽快に相槌を打つ。
「ということは、貴晴くんは高校生ですか」
「いいえ、二十歳の浪人生」
大方の予想通り、貴晴くんは実の伯父の後継者になる道が約束されているらしい。その割に彼は一歩目から盛大に道を踏み外しているという。