スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「過去の作品を見返すことで自分の強みとか書きたいものとか改めて考えようかな……っていうと自分探し中みたいでちょっと恥ずかしいけど、きっと創作やってる人間なら通る道だよね」
「……それ、何で勇也とやってるの?」
「だって勇也さんの発案だし、映像持ってるのも勇也さんだし」
 貴博さんが信じられないという目を向けてくる。
「あ、密室で二人きりとかではないよ。大量のメールでファイルと文章のやりとりしてるだけ」
 第一、リアルタイムでは間が持たない。私が自分の考えを正しく言葉に落とし込むのに結構な時間を要することは、貴博さんももう分かっているはずだ。
「深雪さ、俺のこと恋愛に向いてないとか散々こき下ろしてたけど、あんたも他人のこと言えないよな」
「へ?」
「そういう女に惚れた俺が悪いんだろうけど」
 とうに丼を空にしていた彼は、箸を置いて立ち上がる。
「ちょっと待って」
 慌てて後を追うと、店を出たところで彼は立ち止まり、私を見下ろした。
「家庭教師は構わないけど、間違っても貴晴には惚れるなよ」
「はい?」
「だってあいつ、深雪好みのイケメンだろ?」
 一瞬、何を言われたのか分からなかった。兄と同じ顔立ちなのに、そのことに全く気付かなかったのだ。
「ああ、確かに!」
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