スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました

11 エンドロールに我が名を

 篠目家の人たちは総じて、そうと決まれば話が早い。おかげで年内に結婚式を挙げる準備が整ってしまった。
 大安吉日――その前夜祭。
 劇団カフェオレ御用達の居酒屋に、奈央子と勇也さんが私を呼び出した。
「さすが深雪さん、独身最後の夜こそ羽目を外すべきだって分かってますね」
「別に外さないよ?」
 いつものテーブル席ではなく、ちょっと広い座敷席を予約して私を待ち構えていた後輩の隣にそそくさと座る。向かいの勇也さんが「先に頼んでおいた」と示す先にはいつものハイボールがあった。
「改めまして、結婚おめでとうございます」
 乾杯もそこそこに、奈央子はすぐさま両手に収まるサイズの箱を取り出した。
「というわけで、これ」
 自ら蓋を開けてこちらへ差し出す。夢の実現を象徴するブルーローズが一輪、美しく咲き誇っていた。
「古い布で、新しく作った、青いコサージュを貸してあげます。この意味、分かりますよね?」
 一つ一つの単語を強調するように区切って口にする。
 ――古い、新しく、青い、貸して。
「サムシングフォーでしょう」
「正解です。だから明日、絶対にドレスに付けてあげてください」
 まったく頼もしい後輩である。笑顔で圧を掛けてくる。
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