スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「自前で済ますって言い方はしてたけど、やりたくてやってることは貴博さんも理解してくれてるはず」
 けれども親のために結婚を考え始めた人だから、そこはしっかり「ササメの御曹司」の役目を果たしたかったのだろう。結婚式も披露宴もこちらが引くほど豪華になる予定だし、特に親しい人はいないと公言している私の職場からも当然のように出席者がいる。
「ということで、コサージュは何としても持ち込むから」
「ありがとうございます」
 奈央子は満足げに頷いた後、今度は先輩に話を振った。
「勇也さんはいいですよね。自分が撮影して編集した映像が、堂々と披露宴で流れるんですから」
「いや、まあ……」
 彼も苦笑を隠せないでいる。
「俺が作ったというより、深雪たちが作ったものを形にしただけだから」
 結局のところ、自前に一番こだわっているのは私自身だ。結婚披露宴で流す映像といえば大概スライドか画替わりの少ないビデオメッセージがメインになるところ、新郎新婦が主演のちょっとした短編映画を撮影してしまった。
「お色直しの時間に流すんでしたっけ?」
「うん」
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