スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
自分たちで作ったものをわざわざ一緒に見る必要もないだろう。ある意味で私の初監督作品となった映像は、中座の間お客様を楽しませるものである。
「深雪さんは生粋のエンターテイナーなんですよね。私は自分が結婚する時にはもう、演劇から足を洗いたい気がしますけど」
奈央子がこぼすと、向かいで勇也さんもぼそりと呟いていた。
「俺は逆だな。自分が一生演劇の沼から抜け出せないことに理解ある人としか、一緒になれない気がする」
「だから深雪さんだったんですか?」
「へ?」
私だったって……何が?
「いや、今のはないだろう」
勇也さんが奈央子に食って掛かるが、彼女は涼しい顔をしている。
「深雪さんの独身最後の夜ですよ。言うなら今しかないじゃないですか」
「……人の気も知らないで」
彼はグラスに残っていたお酒を飲み干し、こちらに視線を寄越した。
「実は最後まで迷ってたんだ」
「何がですか?」
「結婚式に乱入して、深雪を連れ去れないかって」
「はい?」
衝撃で声がひっくり返ってしまったが、相手は大真面目だった。
「でも、何度頭の中でシミュレーションしても上手くいかないんだよ。最後にはタチの悪い冗談だったことにして、俺と深雪で貴博くんに土下座する未来しか見えない」
「深雪さんは生粋のエンターテイナーなんですよね。私は自分が結婚する時にはもう、演劇から足を洗いたい気がしますけど」
奈央子がこぼすと、向かいで勇也さんもぼそりと呟いていた。
「俺は逆だな。自分が一生演劇の沼から抜け出せないことに理解ある人としか、一緒になれない気がする」
「だから深雪さんだったんですか?」
「へ?」
私だったって……何が?
「いや、今のはないだろう」
勇也さんが奈央子に食って掛かるが、彼女は涼しい顔をしている。
「深雪さんの独身最後の夜ですよ。言うなら今しかないじゃないですか」
「……人の気も知らないで」
彼はグラスに残っていたお酒を飲み干し、こちらに視線を寄越した。
「実は最後まで迷ってたんだ」
「何がですか?」
「結婚式に乱入して、深雪を連れ去れないかって」
「はい?」
衝撃で声がひっくり返ってしまったが、相手は大真面目だった。
「でも、何度頭の中でシミュレーションしても上手くいかないんだよ。最後にはタチの悪い冗談だったことにして、俺と深雪で貴博くんに土下座する未来しか見えない」