スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「あ、飽きるわけないだろ!」
「分かってる、分かってる」
「そもそも深雪は魚じゃない」
「いいね、そこ否定してくれるんだね」
 友好的ながら妙にうさん臭さを伴った態度で、ポンポンと肩を叩きながら空いていた隣の席に貴博さんを座らせる。
「で、奈央子。もう他のメンバー呼べるよな」
「はい?」
「深雪の結婚祝いをするのに俺たちだけって変だな、とは思ってたんだよ。貴博くんの用件が済んだなら、最初に奈央子が言ったように独身最後の夜は羽目を外さないと」
「ですね!」
 奈央子もパッと笑顔に切り替わり、もうスマホで連絡を取り始めている。舞台俳優って恐ろしい。
「そういうことなら、俺はもう」
 腰を浮かせた貴博さんの腕を、勇也さんは放さなかった。
「何言ってるの? 貴博くん、公演の打ち上げの時も逃げたけどさ、深雪と結婚するならウチのメンバーとは仲良くなってもらわないと困るからね?」
「え?」
「もう舞台に立ってるだけのゲスト俳優じゃないんだから」
 こうなった勇也さんから逃げられるわけもない。およそ十五分後には、劇団カフェオレ勢揃いの宴会が始まっていた。
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