スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
   *

 そして迎えた結婚式当日。
 ウェディングドレスに着替え、奈央子から借りたコサージュも上手く付けてもらい、あらかた支度が整ったところで鏡に映る自分の姿を見つめる。
 最終的に花嫁衣裳は、裾がひらひらしたAラインのシルエットに決まった。半年も前に試着してみせた奈央子の先見の明をひしひしと感じていると、同じく礼服への着替えを済ませた貴博さんが顔を出した。
「終わった?」
「わ!」
 鈍く光る銀色のタキシードに身を包んだ貴博さんが美しすぎた。何度見ても脚が長くてスタイル抜群だし、いつもは割と無造作な髪形も今日はばっちり決まっている。
 やばい、本当に格好いい。私、こんなイケメンと結婚してホントに大丈夫だろうか。
「え、すごく可愛い」
「はい?」
 自分の興奮を抑え付けるのに手いっぱいで反射的に聞き返すと、貴博さんは何の屈託もなく繰り返す。
「すごく、可愛い」
 それからスタッフが席を外していることを確認し、控室の扉を閉めた。
「今のうちに伝えておかないとさ。今日はもう、夜までバタバタして二人きりにはなれないだろうし」
 正式に婚約してから、彼は時折ものすごく甘い台詞を口にする。恋愛経験がないとかホントは嘘なんじゃないか。
< 194 / 204 >

この作品をシェア

pagetop