スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「よく恥ずかしげもなく言えるよね」
「深雪こそ、初めから臆面もなく俺のビジュアル褒め称えていただろうが」
 言われてみればそうだった。なのに、自分の気持ちに気付いてからはどんどん引っ込み思案になってしまっている。
「実際素直になってみると、恥ずかしがってることの方が恥ずかしいってよく分かった」
 どんどん開き直っていく貴博さんが羨ましい。
「その思考回路、完全に役者向きだわ」
 近い将来御曹司から若社長にキャリアアップすることは分かっているが、これからも舞台の上やカメラの前に立ってくれないかと、ちょっと思ってしまう。
 しかしその期待に、彼は首を傾げていた。
「うーん。舞台に立つのは面白いけど、深雪が仕事人になるからな」
「仕事人?」
「ああ。たぶん深雪は、自分で思ってるよりもオンオフの切り替えが激しい。オンの時は最終決定権をきっちり握りしめていて、絶対に逆らえない感じ」
 そうだろうかと首を捻ると、貴博さんはちょっと悪戯じみた笑みを浮かべた。
「オフの時は結構ポンコツ。そのギャップが面白い」
 確かに油断するとすぐポンコツになる自覚はあるが……結局私は、彼にとって面白い女に違いないらしい。
「というわけで、キスしてもいい?」
「へ?」
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