スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
おまけ 脚本家と御曹司の夜
ファミレスやカフェで仕事をしていると、パソコンのタイピング音がやたらとうるさい人がいることにふと気付く。何を隠そう、私自身のことである。
会社で伝票を打つ時はそれほどでもないのだが、脚本だとどうしても熱が入るらしい。筆がノッている時ほど、無意識に指先をキーボードに叩きつけてしまう。
ということで、近頃はもっぱら自宅で脚本を書いている。
自宅とは貴博さんが独身だった頃から住んでいたこのマンションである。会社員としては通勤の便がものすごく良いこと、メゾネットタイプの「面白い」間取りを彼が気に入っていたことから私が転がり込む形になった。少々申し訳ない気もするが、彼からすればこれもウィンウィンなのだろう。
「深雪、ちょっと休んだら?」
顔を上げると、貴博さんが両手にコーヒーカップを持っていた。
「締切が近いのは分かるけど、そろそろキーボードが壊れるぞ」
「もしかしてうるさかった?」
「そんなことは……いや、うるさかったから一服しよう」
ノートパソコンを広げているダイニングテーブルの、ほぼ対角に二つともカップを置いて貴博さんが席に着く。確かにこの布陣では私が移動するのがベストだろうと、パソコンを放置して彼の隣に回り込んだ。
会社で伝票を打つ時はそれほどでもないのだが、脚本だとどうしても熱が入るらしい。筆がノッている時ほど、無意識に指先をキーボードに叩きつけてしまう。
ということで、近頃はもっぱら自宅で脚本を書いている。
自宅とは貴博さんが独身だった頃から住んでいたこのマンションである。会社員としては通勤の便がものすごく良いこと、メゾネットタイプの「面白い」間取りを彼が気に入っていたことから私が転がり込む形になった。少々申し訳ない気もするが、彼からすればこれもウィンウィンなのだろう。
「深雪、ちょっと休んだら?」
顔を上げると、貴博さんが両手にコーヒーカップを持っていた。
「締切が近いのは分かるけど、そろそろキーボードが壊れるぞ」
「もしかしてうるさかった?」
「そんなことは……いや、うるさかったから一服しよう」
ノートパソコンを広げているダイニングテーブルの、ほぼ対角に二つともカップを置いて貴博さんが席に着く。確かにこの布陣では私が移動するのがベストだろうと、パソコンを放置して彼の隣に回り込んだ。