スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「……はい?」
勇也さんは私の考えていたことをズバリ突いてきた。
「やる気みたいだし理解力も半端ないし、ちゃんと説明すれば分かってくれるんじゃない?」
「でも」
「実際問題彼の方が器用だし、きっと役作りにも使えるよ」
「それは分かるけど」
改めて稽古場を俯瞰する。
部屋の隅っこに――単純にコンセントの近くに――構えるのが基本の音響班だけでなく、前のめりで稽古を見ることが多い照明班も、近頃は壁際に縮こまっている。美術班に至っては、いつになく自分たちの作業に勤しんでいる。
それもこれも、ヒーローとヒロインの間に流れる空気感のせいだった。
貴博さんがヒロであろうとするのは舞台の上、クラップとクラップの間だけで、劇団員もびっくりの切り替えの早さである。一方の奈央子は自分の中のユメを見い出し、入り込み、常にユメであろうとしている。これまた極端に役が抜けないタイプだろう。
つまり二人は、役者としてかなり相性が悪いのだ。
現状を打開しようと考えた時、稽古中だけでも貴博さんにはもう少し丸くなってもらえるとありがたい……なんて、本当にお願いしてもいいものだろうか。
「舞台に立ってるだけでいいって言ったのに」
切り替えの利かない奈央子のせいで、貴博さんに演技をしていない時までヒロであることを求めるのは、さすがにどうかと思ってしまう。
勇也さんは私の考えていたことをズバリ突いてきた。
「やる気みたいだし理解力も半端ないし、ちゃんと説明すれば分かってくれるんじゃない?」
「でも」
「実際問題彼の方が器用だし、きっと役作りにも使えるよ」
「それは分かるけど」
改めて稽古場を俯瞰する。
部屋の隅っこに――単純にコンセントの近くに――構えるのが基本の音響班だけでなく、前のめりで稽古を見ることが多い照明班も、近頃は壁際に縮こまっている。美術班に至っては、いつになく自分たちの作業に勤しんでいる。
それもこれも、ヒーローとヒロインの間に流れる空気感のせいだった。
貴博さんがヒロであろうとするのは舞台の上、クラップとクラップの間だけで、劇団員もびっくりの切り替えの早さである。一方の奈央子は自分の中のユメを見い出し、入り込み、常にユメであろうとしている。これまた極端に役が抜けないタイプだろう。
つまり二人は、役者としてかなり相性が悪いのだ。
現状を打開しようと考えた時、稽古中だけでも貴博さんにはもう少し丸くなってもらえるとありがたい……なんて、本当にお願いしてもいいものだろうか。
「舞台に立ってるだけでいいって言ったのに」
切り替えの利かない奈央子のせいで、貴博さんに演技をしていない時までヒロであることを求めるのは、さすがにどうかと思ってしまう。