スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「深雪が演出で渋るなんて珍しい。よっぽど貴博くんには嫌われたくないの?」
「じゃなくて。やってられないって降りられても困るし」
「大丈夫だと思うけどな。役者の馬が合わない時に周りがフォローを入れるのは当然のことだし、深雪は脚本家だけあって指示も真意もきっちり言語化してくれるから」
そう告げる勇也さんは、何も言う前から私の思考を理解している。こうした彼とのやり取りが、ヒロというキャラクターを作る際にヒントとなったことは、恥ずかしくてとても口にはできないが。
「それと」
勇也さんが急に食えない笑顔を見せる。
「どうせ奈央子は、公演が終わったら『あんな顔だけ男のどこがいいのか分からない』とか言い出すに決まってるんだから」
「……ああ」
彼の言葉に、思わず笑ってしまった。
確かに奈央子はことあるごとに男に惚れ込む癖があるが、終わってみればケロッとしていることも多い。だからこそウチの看板女優も続けられている。
「あれだけ惚れっぽいのに後腐れしないのって偉いよな」
「ですね」
人間関係を引っかき回す役者は扱いづらいはずなのに、結構な愛されキャラなのだ。
「おい、さっきから二人で何こそこそしてるんだ?」
貴博さんがむすっとした顔でこちらに近づいてくる。ずっと話し込んでいた私と勇也さんにしびれを切らしたらしい。
「言いたいことがあるならはっきり言えよな」
「え?」
「じゃなくて。やってられないって降りられても困るし」
「大丈夫だと思うけどな。役者の馬が合わない時に周りがフォローを入れるのは当然のことだし、深雪は脚本家だけあって指示も真意もきっちり言語化してくれるから」
そう告げる勇也さんは、何も言う前から私の思考を理解している。こうした彼とのやり取りが、ヒロというキャラクターを作る際にヒントとなったことは、恥ずかしくてとても口にはできないが。
「それと」
勇也さんが急に食えない笑顔を見せる。
「どうせ奈央子は、公演が終わったら『あんな顔だけ男のどこがいいのか分からない』とか言い出すに決まってるんだから」
「……ああ」
彼の言葉に、思わず笑ってしまった。
確かに奈央子はことあるごとに男に惚れ込む癖があるが、終わってみればケロッとしていることも多い。だからこそウチの看板女優も続けられている。
「あれだけ惚れっぽいのに後腐れしないのって偉いよな」
「ですね」
人間関係を引っかき回す役者は扱いづらいはずなのに、結構な愛されキャラなのだ。
「おい、さっきから二人で何こそこそしてるんだ?」
貴博さんがむすっとした顔でこちらに近づいてくる。ずっと話し込んでいた私と勇也さんにしびれを切らしたらしい。
「言いたいことがあるならはっきり言えよな」
「え?」