スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
私は奈央子をかばうように彼の前に仁王立ちになっていた。
「謝って」
「は?」
「あなたは今、ヒロとして言ってはいけないこと言った」
貴博さんは怪訝そうな顔をしてこちらを見ていた。何が悪かったのか、本当に理解できないのだろう。
それでも私は、演出家としてはっきり告げる。
「確かにあなたの言葉は、間違ってはいないのかもしれない。こうなった奈央子はだいぶ面倒くさいしね。でも、公演が終わるまでは、この子があなたにとって一番大事な女の子なの」
「……芝居の話だろ?」
「うん。だけど、みんながみんな貴博さんみたいに割り切れない。舞台を立てる上で良好な人間関係は欠かせない」
もっと早くに気付くべきだった。舞台に立っているだけでいいなんて、そんなの無理があったのだ。
「深雪さん」
背後からおずおずと奈央子の声がした。
「……あの、私が降ります」
「へ?」
「だって、貴博さんもヒロくんも悪くないんですもん。もともとユメもあんまり私っぽくない役だったし」
「ちょっと」
奈央子はすっと舞台を降りた。その退場劇があまりにも絵になってしまったから、私はその場から動くことができずに呆然と彼女の後ろ姿を眺めていた。
ややあって、勇也さんが後を追う。
「俺が奈央子の話は聞いておくから、あれだったら深雪が稽古場締めといて」
「謝って」
「は?」
「あなたは今、ヒロとして言ってはいけないこと言った」
貴博さんは怪訝そうな顔をしてこちらを見ていた。何が悪かったのか、本当に理解できないのだろう。
それでも私は、演出家としてはっきり告げる。
「確かにあなたの言葉は、間違ってはいないのかもしれない。こうなった奈央子はだいぶ面倒くさいしね。でも、公演が終わるまでは、この子があなたにとって一番大事な女の子なの」
「……芝居の話だろ?」
「うん。だけど、みんながみんな貴博さんみたいに割り切れない。舞台を立てる上で良好な人間関係は欠かせない」
もっと早くに気付くべきだった。舞台に立っているだけでいいなんて、そんなの無理があったのだ。
「深雪さん」
背後からおずおずと奈央子の声がした。
「……あの、私が降ります」
「へ?」
「だって、貴博さんもヒロくんも悪くないんですもん。もともとユメもあんまり私っぽくない役だったし」
「ちょっと」
奈央子はすっと舞台を降りた。その退場劇があまりにも絵になってしまったから、私はその場から動くことができずに呆然と彼女の後ろ姿を眺めていた。
ややあって、勇也さんが後を追う。
「俺が奈央子の話は聞いておくから、あれだったら深雪が稽古場締めといて」