スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「演劇フリークのヤバい女だと思われているみたいだけど」
「別に演劇と恋愛は関係ないじゃないですか」
 ついさっき同じようなことを言われた気がする。まるで正反対の意味で。
「でも、結婚だよ。急にそんなこと」
「だったら納得いくまで話し合えばいいじゃないですか。深雪さん、言葉を扱うことは得意でしょう」
 奈央子はスッと右手を差し出した。
「スマホ、出してください」
「え?」
「貴博さんに連絡してみましょう」
「何で?」
 反発するように聞き返してしまったが、彼女の意図は考えるまでもなかった。
「私から電話してあげましょうか?」
「……いい、自分でする」
 美女からの圧に押されて、発信ボタンをタップする。スリーコールも鳴らないうちに電話がつながった。
『深雪?』
「もしもし、貴博さん」
 で、どう切り出す?
「あの、先日話があるとおっしゃっていたじゃないですか」
『……ああ、でも無理に持ち掛けるような話じゃなかったから』
 やはり結婚のことなのか。
「大丈夫です」
『え?』
「いえ、伺う分には大丈夫です。急に会社で話し掛けられたのがあれだっただけで」
 目の前で奈央子が小さくガッツポーズを作る。更に口パクで「いけ!」と発破を掛けていた。
「だからもう一度、ゆっくり話せるところで会えませんか?」
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