スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「ダメ、というか……結婚相手を選ぶ基準ではなくない?」
 メリットデメリットの話はどこに行ったのか。
「一緒にいて面白いと思えるかは大事な選考基準だろう。母親が連れてくるお見合い相手なんか俺のこと『ササメの御曹司』としか見てなくて、基本的に愛想振りまいてくる女ばっかりだからな」
 その主張もきっと正しいのだろう。結果冷たくあしらって、相手から水をぶっかけられていた。
 とはいえ、今の話では私が選ばれたのも消去法に思えてくる。
「貴博さんは極端なのよ。お見合い相手だって初めは猫被るしかなかっただろうし、もう少し友好的に振る舞って人間関係を築いてさ、ちゃんと相手の人となりを観察してから判断したっていいんじゃないの?」
「何で俺がそこまでしないといけないの?」
 真顔で聞いてくる辺り、やっぱりこの男は我の強い御曹司なのだろう。
「俺は深雪がいいって言ってるんだよ。で、深雪が俺と結婚する上でのメリットも提示できると思ってる。仕事を辞めて演劇に打ち込んでくれても全然構わないというか、そんなふうに夢を追いかける深雪を見てみたいと思う」
「私の旦那兼パトロンになるってこと?」
 貴博さんは躊躇なく頷いた。
「何か問題あるか?」
 そのキッパリした態度が、逆に不安をかき立てた。
 二杯目のお酒を注文し、一つ気になっていたことを確認する。
「親御さんはそれで納得してくれるの?」
「え?」
< 80 / 204 >

この作品をシェア

pagetop