スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
 到着音と共に扉が開くと、こちらを気遣うことなくエレベーターを降りる。さすがにスタスタと置いていくようなことはないが、御曹司ならばもう少しレディファーストの精神を身に着けていてほしいところだ。なんて、彼の隣を歩きながら考える。
 ここまで来たのに、貴博さんが分からない。
 部屋の前まで辿り着き、カードキーを使って彼がドアを開ける。内開きなので扉を押さえてもらうまでもなく共に足を踏み入れた。
 パチッと、部屋中の照明に一斉に明かりがともる。
 真っ先に目に付いたのは大きな窓に映し出された東京の夜景だ。それから広々としたダブルベッド、お洒落な間接照明、ソファも大きなコの字に設置されていてかなり贅沢だ。ここが一流のシティホテルであることは分かっていたが、一般的なツインルームと比べると三倍くらい豪華だった。
「こんないい部屋……」
「急だったから、空いてたとこ適当に選んだ」
 御曹司は素っ気なく告げて、部屋の入り口で立ち止まった私を奥へ連れていく。
「で、どうする?」
「はい?」
「俺はこのまま始めちゃってもいいけど、シャワーとか使いたい?」
「あ、え、えっと」
 時間を置いて冷静になってしまったら、そういう空気まで消えてしまう気がした。
「大丈夫です」
「そう」
 頷いた貴博さんはすぐさま私を抱き寄せ、唇を重ねた。
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