スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
 対してこちらも、彼の肩にしがみつき、更なるキスをせがんだ。全てはこれからだというのに、無事にことが始まったことに安堵している自分がいる。
 ああ、やっと。
 彼がそろりと探るように突き出した舌を、積極的に引き入れる。瞬間、相手の身体がびくりと震えた気がしたが――構うものか。私だって散々じらされたのだ。少しでも彼に近づきたくて、何度も唇を押し付けた。
 息の詰まるような口づけを繰り返しながら、私たちはベッドになだれ込んだ。
 仰向けになった私を見下ろし、彼の掌が肩から胸へと這っていく。服の上から胸のふくらみをなぞる。鈍い快感が期待となって、身体の中心がうずいた。
「んん」
 思わず漏らした吐息は、彼に唇を塞がれて行き場を失う。上の空でキスを続けていると、いつの間にかその唇は首筋に吸いつき、ゆっくりと下へ向かっていった。襟ぐりの際で鎖骨に触れる。
 そこでふと、彼の手が止まった。
「これ、どうやって脱がせるの?」
 大人っぽく攻めたつもりのワンピースは、遊びの恋などしない貴博さんには少々ガードが堅かったらしい。
「背中に、ファスナーが」
 皆まで言う前にその手が背後に回る。袖を抜いて上半身の布地を腰元に引き下ろすと、彼もまた服を脱いだ。引き締まった身体が目の前に現れる。
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