スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
製菓会社に就職してから、差し入れにはもっぱら勤め先の焼き菓子を利用している。それが今日、久方ぶりに実家のケーキを用意したことで、私の家族も何かあると勘付いていたようだった。あちらにもこの状況をそろそろ説明しなければならないが、全ては今日を乗り越えてからだろう。
「緊張することないからな」
「……はい?」
「前にも話したけど、深雪が『どこの馬の骨』だとか言われるわけがないんだから」
「そんな発言が飛び出すレベルの上流階級に挨拶する時点で、既に気が重いんだけど」
「ものの例えだろ。そもそも馬の骨って何だよ?」
「それは……私も知らない」
ひょっとして貴博さん、私に気を使ってくれているのだろうか。あるいは彼も緊張している? 沈黙を埋めるようにぽつぽつ話す姿は、ちょっと珍しい気がした。
そうこう話しているうちに、待ち人が現れた。
先に顔を出したのは篠目社長、いや、ここは父の貴一さんと呼ぶべきだろうか。相変わらず食えない笑顔を浮かべ、私に会うためか他にも予定があるからかは分からないが、きちんとスーツを着ている。
「やあ、待たせたね」
こちらが反射的に立ち上がると、いいからとすぐに着座を促し、自らも貴博さんの向かいに腰を下ろした。続いて現れた文乃さんは、恐ろしく冷たい目をしていたが、何も言わずに私の向かいに座った。
「緊張することないからな」
「……はい?」
「前にも話したけど、深雪が『どこの馬の骨』だとか言われるわけがないんだから」
「そんな発言が飛び出すレベルの上流階級に挨拶する時点で、既に気が重いんだけど」
「ものの例えだろ。そもそも馬の骨って何だよ?」
「それは……私も知らない」
ひょっとして貴博さん、私に気を使ってくれているのだろうか。あるいは彼も緊張している? 沈黙を埋めるようにぽつぽつ話す姿は、ちょっと珍しい気がした。
そうこう話しているうちに、待ち人が現れた。
先に顔を出したのは篠目社長、いや、ここは父の貴一さんと呼ぶべきだろうか。相変わらず食えない笑顔を浮かべ、私に会うためか他にも予定があるからかは分からないが、きちんとスーツを着ている。
「やあ、待たせたね」
こちらが反射的に立ち上がると、いいからとすぐに着座を促し、自らも貴博さんの向かいに腰を下ろした。続いて現れた文乃さんは、恐ろしく冷たい目をしていたが、何も言わずに私の向かいに座った。