狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


    ―✿―✿―✿―

 そうして、さぎりは穏やかに御影の家で過ごしていた。
 ある日、御影がさぎりに、こう漏らした。

「さぎりさんは、本当に賢いのね。お話してて楽しいし……欲しくなっちゃうわ」
「奥様?」
「きゅ、きゅん!?」

 ふうとため息をつく御影に、さぎりは目を丸くし、子狐は何やら慌てた素振りを見せている。
 どうも、御影によると、彼女は仕事を引退したものの、後任が拙いので仕事の手伝いが続いてしまっているらしい。

「息子が引き継いだんだけれどね。本当に、頼りなくて困ってしまうのよ」
「まあ」
「さぎりさん、うちの嫁に来ないかしら? さぎりさんなら、やっていけると思うのよ」
「も、もう。奥様ったら、口が上手いんですから」
「きゅーん!!?」
「あら、子狐ちゃんが警戒しているわ。もしかして、既に好い人が居るのかしらね」

 カアッと顔を赤らめるさぎりに、御影はあらあらと驚き、次いで、彼女を微笑ましく見守る。

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