狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
「私も血眼で探しました。けれども、希海は姿を消したままなのです。あのような黄金色の髪、さぞ目立つ筈だというのに」
「居なくなったのはいつの事だ」
「……三週間以上、前になるかと」
征雅は唖然とした。
七歳の子どもが行方不明。仮に家を預かる者としては、失態もいいところである。希海に何かあれば、崇史はこの男を許す事はないだろう。
ようやく萩恒家の管理が手の内に収まった矢先だというのに、早々に現当主に付け入られる隙を見せて、一体この先どうするつもりなのか。
「その体たらくで、この萩恒家を如何様にできるというのか!」
「……」
「もう良い。火傷痕のある女と、狐を探せ」
「……火傷痕の?」
「そうだ。その女が、狐を連れている。その狐、おそらく異能の力を使う」
目を見開く律次に、征雅は頷く。
「それができれば、此度の失態の件、あの方に取りなしてやる。どこまで効果があるか分からんが、無いよりましであろう」
「……! ありがとう、ございます!」
平伏する律次に、征雅は歯噛みする。
好いように使えそうな小娘は消えた。
崇史を頼るなど、有り得ない。
こうなったらもう、あの女と狐を探すしかない。
つまりそれは、異能の力が使えない状態が続くことを意味していた。