狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
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「大丈夫ですよ、奥様。私はただの平民ですから、誰にも興味を持たれません」
力強く笑うさぎりに、御影は何故かがっくりと肩を落としている。
そもそも、さぎりは使用人なのだ。
買い出しのため、外に出るのは当然のことである。
「……買い出しの使用人は居る設定にした方がよかったかしら」
「え?」
「いいえ、なんでもないのよ。じゃあ、これを持っていてちょうだい」
御影はそう言うと、さぎりに真っ白な包みの小さなお守りを渡した。首からかけられるように、美しい長い紐がついている。
「……奥様」
「子ども扱いじゃないのよ。ただね、うちはその……お金持ちだから。使用人の貴方も念のため。ね?」
そう言われてしまうと、さぎりは首を縦に振るしかない。
「外に出る時は、本当に気をつけてね」
「はい。ご心配有り難うございます」
こうして、過剰なまでに心配されながらも、さぎりはこの三週間、割と外に出かけていた。