狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


「成程」

 征雅の手がさぎりの首を掴み、上へと持ち上げる。
 細腕のさぎりが敵うはずもなく、声を上げることもできず、彼女は首の手を外そうと、ただ必死に抵抗する。

「かっ……は……」
「お前は、ここで消さねばならないらしい」

 二十代の男である征雅が本気で手に力を籠め始めたので、か弱い娘にすぎないさぎりにはどうしようもない。

 さぎりは、ここで初めて、死の恐怖を感じた。

 ここで、終わるのか。

 希海が居るのに。
 希海の目の前で、彼女を守ることもできずに。

 涙で滲むさぎりの視界に、小さな狐火が現れる。

「さぎりを、離してー!」

 どうやら、床に這いつくばったまま、希海が必死に狐火を起こしたようだ。希海は弱っており、現れた狐火は小さく弱く、それだけでは征雅を止めることはできない。

 しかし、征雅の気を惹くには十分だったようだ。
 征雅は希海を見ると、目を細め、口元を緩める。


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