狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
3 狐付きの火傷娘の働く場所はないらしい
さてはて、家を追い出されたさぎりは、職を見つけるべく、帝都を奔走していた。
そして、見事に惨敗し、公園のベンチに腰掛け、ぐったりとしてうなだれていた。
「きゅーん……」
「ごめんね、子狐ちゃん。不安になっちゃったね」
「きゅん……」
「大丈夫よ。ほんの少しなら蓄えがあるから、暫くは生活できるんだからね」
「……」
さぎりの隣に座り、彼女の膝に頭を置いた子狐は、心配そうにさぎりを見上げている。
そんな子狐を、さぎりは優しく撫でた。
気持ちよさそうにしている子狐は、安心したのか、目をとろとろさせて、眠そうにしている。
さぎりは、住み込みの奉公先やカフェでの給仕の仕事を探して、手当たり次第に何件も訪れて回った。
しかし、求人を掲げていた者達は皆、さぎりの首元や手の無数の火傷を見て、顔をしかめ、けんもほろろに断ってくる。
「うちは客商売だ。そんな怪我人みたいな見た目じゃ、雇えないよ」
「狐付きぃ? 動物は入れられないね」
「何をしたらそんな怪我をするんだ? 気味が悪い……家の中に居たら辛気臭くなるじゃあないか」
そう言われてしまうと、もう何も言えることは無い。ただ頭を下げて、その場を立ち去るだけだ。
そうして、結局どこ行く宛てもなくなってしまったところで、この公園にたどり着いたのである。
さぎりは、眠ってしまった子狐を撫でながら、撫でている自分の手を見つめる。
火傷の痕だらけで、醜い手。この傷は、手先だけのことではない。
なんとか顔だけは守ってきたけれども、首からほんの少し、頬にかけて、跡が残ってしまっている。
(まさに、醜女ね……)