狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。

13 【回想】遠征先で




 三週間前のこと。

 萩恒(はぎつね)家の当主、萩恒崇史(たかし)は、希海(のぞみ)とさぎりから一月も離れるという事態に不安を感じながらも、帝の命に従い、妖怪討伐へと向かった。

 帝都で最近導入された電車なる移動手段は、帝都内だけで利用されるものだったので、現場へ行く手段は馬車である。
 早く帝都に戻りたかった崇史は、御者を急かし、通常であれば半月を要する道のりを、一週間と五日で辿り着く。
 連れの龍美家と音梨家の戦士達も、長く顔を突き合わせたい同士では無いと考えていたのだろう。崇史のやる事に口は出さなかった。

 そうして現場で妖怪を探し、討伐を繰り広げていたある日、手紙が届いた。
 美しい封筒に入った手紙は二通。

 一通は、紙の上をのたくるような子どもの字で、こう書いてあった。

『たかにぃ へ
 さぎりと いえを でました
 はやく かえって きてね
           のん より』

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