狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


 夕方、駆けつけてきた崇史に、御影は驚くと同時に、青ざめた顔で告げる。

「二人が戻らないの。どうやら、(さら)われたようなのよ。お守りを渡してあるから、場所は分かるわ。今、人を遣わして――」
「どこです」
「崇史」
「二人はどこです」

 逸る気持ちを抑え、ただ問うてくる崇史に、御影は青い顔で答える。

「龍美家の本邸」

 崇史は、そのまま御影の家を飛び出した。

 龍美家が、二人に何用なのだ。
 良い理由である筈がない。あの家は、萩恒家を敵視している。
 二男の征雅(せいが)は分かりやすく敵意を向けてくるが、それよりも、長男の泰雅(たいが)だ。おそらく、あれは二男なんかよりも。

 そこまで考えたところで、胸の内に熱く炎が灯ったような感覚があった。

 崇史がさぎりに渡したお守りが発動したのだ。


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