狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
14 再会
龍美家の本邸の一部を破壊し、天井の吹き飛んだ室内にいるさぎりと希海を見た大狐は、大きく目を見開いた。
さぎりは頬を腫れ上がらせ、着物を乱しており、希海はその腕の中で倒れ伏している。
二人とも、首元に絞められたようなあざがある。
犯人と思しき白銀の髪の男を大狐が睨みつけると、男はガタガタと体を震わせながら、こちらを見て立ちすくんでいる。
大狐は、迷わず狐火を放った。
「ぎゃっ!」
全身を狐火に覆われた男は、悲鳴を上げると、狐火の檻の中で転がりまわる。打ち払おうとしても、纏わりついて消えない狐火に、悲鳴を上げながら苦しんでいる。しかし、大狐は男を、実際には燃やしていない。
それは、狐火の幻影だった。
真に肌を焼く炎を選ばなかったのは、決して優しさからくるものではない。
一時の苦しみでは許さないという、大狐の怒りと恨みによるものである。
「――狐だ!」
男の悲鳴を聞きつけたのか、結界と本邸を破壊した大狐を目視したからか。
官憲の装いをした龍美家の者達がわらわらと現れ、大狐の元に集まってくる。
「狐の妖怪が出たぞ! 征雅様をお守りしろ!」
「異能の力を使うぞ、石を持て!」
その掛け声に呼応するように、一部の官憲達は、懐から白い香り袋を取り出した。
そこで、大狐は気がついた。
――四年前に見た、あの、憎き香り袋。
それが視界に入った途端、大狐の心の臓が重くなる。胃が、肺が、肩が、頭が、重くて動けないと訴える。異能の力を、上手く操ることができない。
けれども。
(全く力を出せない訳ではない)
身の内で燃えさかる、炎のごとき異能の力に、大狐は嗤う。
(――十分だ)
大狐は、咆哮した。