狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


   ―✿―✿―✿―

 そうして梨を抱え、さぎりが帰ってきたのは勿論、萩恒家の本邸だ。
 迎えてくれるのは、可愛い七歳の幼子と、大切な主人。

「さぎり! おかえりー!」
「ただいま戻りました、希海様」
「おかえり、さぎり」
「はい。お待たせしました、崇史様」

 飛びついてくる希海を抱きしめた後、さぎりは買い物用の風呂敷を持って、土間へと急ぐ。

「今日はね、美味しい秋刀魚が手に入りました。梨もありますよ」
「さんま! 梨ー!!」
「早く料理人の光蔵さんに渡してしまいましょう」
「さぎり、俺が持つ」
「えっ。崇史様」
「好いた女子に、重いものを持たせるものではないからな」
「……!」
「好いたおなごー!!」
「の、希海様!」

 からからと笑う崇史と希海に、さぎりは真っ赤になって俯いてしまう。


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