狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
―✿―✿―✿―
実は、先日さぎりは、崇史に正式に求婚されたのだ。
叔父・佐寝蔵律次のやったことを聞いた崇史は、額に手を当てると、さぎりに詰め寄った。
「さぎりは、俺が他に妻を宛がわれても良いのか」
「えっ」
「この思いは、一時的なものだと?」
「えっ。あの」
「それとも、有無を言わせず奪い取った方が好いのか」
壁際まで詰め寄ってくる崇史に、さぎりは顔を真っ赤にして震える。
しかしさぎりは頑張った。
今のさぎりは、今までのさぎりとは、違うのだ。
もう心は決まっている。
震えながらも、崇史の胸に手を当てるさぎりに、崇史は目を瞬いた。
「……崇史、様」
「……」
「好き、です」
そっと崇史の胸に顔を埋めたところ、反応がない。
それでも、さぎりは必死に、崇史に取りすがった。
「他の方と、結婚しては、嫌です」
「……」
「崇史様……?」
さすがに不安になって顔を上げると、そこには首から上を真っ赤に染めた主人がいた。
さぎりと目が合うと、慌てたように目を逸らして、口元を押さえている。
「誰にそのような技を習ったのだ!」
「え、ええ……?」
「さぎりは狡い女子だ」
そう言って動揺している崇史に、さぎりは初めて、自分から抱き着いた。
その後、崇史はさぎりを逢引きに誘い、正式に求婚した。
そうして、それを受けたさぎりは、崇史の正式な婚約者となったのである。