狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
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初めて歩く帝都の街は、とても大きくて、とても広かった。
昼前に家を出たさぎりと子狐は、二人で一緒に、露天のお肉を買って食べ、お店でお昼を食べる。
とっても楽しくて、美味しくて、希海は天にも昇る心地だ。
しかし、午後になり、さぎりが職探しを始めた辺りから、雲行きが怪しくなった。
さぎりのお仕事が決まらないのだ。
お仕事をお願いした相手は皆、さぎりの火傷痕を見て、顔を顰めてしまう。ついでに、子狐の希海を見て、眉を顰める。
希海はショックだった。
こんなに優しくて真面目で働き者のさぎりが、火傷痕のせいでお仕事がなくなるなんて、思ってもみなかった、
希海の近くにいたのは、いつだって、さぎりと崇史だけだった。使用人達を遠目に見ることはあっても、傍に居るのは二人だけ。
だから、さぎりの火傷痕のことなんか、希海は気にしたこともなかったのだ。
しかも、さぎりの火傷痕は、今よりも小さかった頃の希海がつけたものだ。
さぎりに抱っこされながら、彼女の喉元をぺたぺた触って、「こっちはつるつるー、こっちはざらざらー」と言う無邪気で幼い希海に、さぎりは笑顔だった。
けれども、もしかして、希海はさぎりに大変なことをしてしまったのではないだろうか。
公園で休んでいるさぎりに、希海は心配できゅんきゅん声をかけるけれども、さぎりに撫でられると、初めて外に出た疲労もあって、ついうとうと眠り込んでしまう。
そしてその後、お宿まで断られて、希海は哀しくて申し訳なくて仕方がなかった。