狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
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だから、お仕事をくれた御影ばーちゃんのことが大好きになった。
お家のお掃除も楽しかった。雑巾掛けをするさぎりについて回り、埃が残っているところをさぎりに報告し、「よく見つけたわね、良い子」とさぎりに褒めてもらうのだ。
希海は有頂天だった。
しかし御影の家に来て三日後に気がついた。
(のんはさぎりを、守らないといけないんだった!)
希海がしたことといえば、銀髪の男の人に絡まれて、脳裏の狐さんの後押しのまま、怒りに任せて呪いの狐火を放ったことくらいだ。
ちなみに、狐さんによると、あれで銀髪の男の人は、一ヶ月か二ヶ月は異能の力が使えなくなるとのことだった。
(それって、あの悪い人にとっても、あんまり大したことないんじゃないかなあ?)
異能の力に重きを置いていない希海は、首を傾げながら、脳裏の狐さんが満足そうにしているので、まあいいかと忘れることにする。
つまり、希海がしたのは、たったそれだけ。
さぎりは、御影ばーちゃんの力でお仕事とお家を得たのであって、希海は何もしていない。
(これはいけないの。のんの、こけん……こ、かん? に、関わるの!)
そう決意した希海は、何をするべきか悩みながら、御影ばーちゃんの家をうろうろと彷徨う。
そして、目にしたのだ。
御影ばーちゃんは、毎日、沢山のお手紙を書いて送っている!
(のんも、たか兄ぃに手紙を送るの。さぎりを守る戦士として、ごほうこくするのよ!)
こうして、希海のお手紙任務は開始されたのである。