狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。


    ―✿―✿―✿―

 だから、お仕事をくれた御影ばーちゃんのことが大好きになった。

 お家のお掃除も楽しかった。雑巾掛けをするさぎりについて回り、埃が残っているところをさぎりに報告し、「よく見つけたわね、良い子」とさぎりに褒めてもらうのだ。
 希海は有頂天だった。

 しかし御影の家に来て三日後に気がついた。

(のんはさぎりを、守らないといけないんだった!)

 希海がしたことといえば、銀髪の男の人に絡まれて、脳裏の狐さんの後押しのまま、怒りに任せて呪いの狐火を放ったことくらいだ。

 ちなみに、狐さんによると、あれで銀髪の男の人は、一ヶ月か二ヶ月は異能の力が使えなくなるとのことだった。

(それって、あの悪い人にとっても、あんまり大したことないんじゃないかなあ?)

 異能の力に重きを置いていない希海は、首を傾げながら、脳裏の狐さんが満足そうにしているので、まあいいかと忘れることにする。

 つまり、希海がしたのは、たったそれだけ。
 さぎりは、御影ばーちゃんの力でお仕事とお家を得たのであって、希海は何もしていない。

(これはいけないの。のんの、こけん……こ、かん? に、関わるの!)

 そう決意した希海は、何をするべきか悩みながら、御影ばーちゃんの家をうろうろと彷徨う。

 そして、目にしたのだ。

 御影ばーちゃんは、毎日、沢山のお手紙を書いて送っている!

(のんも、たか兄ぃに手紙を送るの。さぎりを守る戦士として、ごほうこくするのよ!)

 こうして、希海のお手紙任務は開始されたのである。

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