狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
こうして、希海は任務を開始した。
まず、探すべきは、筆と硯と紙の場所だ。
「……よし、書けた」
「きゅん」
「あら、子狐ちゃん。いらっしゃい」
手紙を書き終えた御影は、硯をくんくんと嗅いでいる子狐に、首を傾げる。
「硯が気になるの?」
「きゅん」
「いつもはね、墨と筆と一緒に、この棚にしまっているんだけれど」
「きゅん!」
「……」
好奇心を抑えられないといった素振りの子狐に、御影は思案する。
「……紙はね、いつもここに沢山入れてあってね」
「きゅん!」
「一枚無くなっても、きっと分からないわね」
「くうーん!」
「飛脚さんは、毎日うちに来て貰っているのよ。私が沢山、お手紙をお願いするからね」
「きゅん……?」
「一枚くらい、知らない手紙が混ざっていても……気が付かないかもしれないわね……」
「きゅん……!!」
御影が子狐を撫でると、子狐は嬉しそうに目を細めた後、意気揚々と部屋を去って行った。
御影は、何も言わずに、尻尾が揺れるその後ろ姿を眺めていた。