狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
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深夜、希海は眠い目を擦って、起き上がる。
(狐さん、狐さん。のんは、人間に戻りたいの!)
頭の中で呼びかけると、希海はふわりと、緋色の着物を着た人の姿へと転変した。
「よし、行くのよ!」
「うーん……」
「!」
勢いよく拳を天に突き上げたところで、思わず声が出てしまい、寝ていたさぎりから声が漏れる。
希海は手で自分の口を塞ぐと、そろり、そろりと、御影の書き物部屋へと向かった。
部屋の机の上には、何故か煌々と灯りの火が灯されており、希海は「よく見えるのー!」と喜びながら机につく。
しかもその机には、お夜食と思しき、小さないなり寿司とお茶まで用意してあるではないか!
希海はいなり寿司を頬張り、お茶を飲み、「夜の探検、最高なの! きっと、夜に勇気を出した戦士のご褒美なの……」と呟きながら、手を合わせてごちそうさまをし、一緒に置いてあったおしぼりで手を拭く。
そして、御影の隅と硯と筆を取り出し、紙を用意し、満腹によってうとうとと閉じそうになる目を擦りながら、手紙をしたためた。