狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
「たかにぃへ……うーんと、うーんと。さーぎーりーとー、いーえーをー……」
書いている文字を全部声に出している秘密の戦士は、襖の影から自分の姿を見て、お腹を抱えて声もなく笑っている老婦人には、勿論気がついていない。
手紙が完成したところで、希海は硯をきちんと台所で洗い、元の場所に戻して、そっと灯りの火を消した。
お片付けをしない悪い子は、さぎりに叱られてしまうのだ。
「よし! のんは、良い子!」
そう言うと、希海は書き上げた手紙を持って、うきうきで部屋を去る。
残されたのは、消された灯りと、つるりと無くなったお夜食の皿と湯呑み……。
御影の腹筋は翌日、筋肉痛になったらしい。