狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
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そして、翌日が正念場だ。
お昼を少し過ぎた頃、御影の家には、飛脚がやってくる。
その人が、手紙をいろんなところへ送り届けてくれるのだ。
希海は、さぎりが台所で昼食の片付けをしている様を見て、今ならいけるとしたり顔で頷く。
そして、御影が飛脚に手紙を渡して家に入り、飛脚が荷車に手をかけたところで、人に戻った希海は声を上げた。
「ひきゃくの、おにーさん!」
黄金色の髪に、緋色の瞳の七歳児の登場である。
飛脚をしている二十代の男は、しかし、希海の姿を見ても驚かなかった。
「あー、はい。飛脚です。お嬢さんはおにーさんに、何かご用なのかな?」
「うん。この手紙をね、送ってほしいの!」
封に入らない、素のままの手紙を渡され、しかし飛脚は動じない。
「ほうほう、成程成程」
「おにーさん、届けてくれる?」
「うんうん、いいですとも。それで、これをどちらに?」
「えっとね、たかにぃのところに!」
華やぐ笑みを浮かべる希海に、飛脚は首を傾げる。