狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。

4 【回想】萩恒家の若い当主はとても優しい



 十六歳だったさぎりは、一人、希海(のぞみ)の近くに侍っていた。
 いつでも可愛い主人のため、笑顔を絶やさず、その世話をする。

 そんなさぎりを、萩恒(はぎつね)家の当主である崇史(たかし)は、最初からずっと心配していた。

「さぎり。まだ決心はつかないか」
「まだというより、ずっとつきませんよ」
「さぎり!」
「私が希海様から離れたら、お困りでしょう?」

 柔らかく透けるような茶色の髪、緋色の瞳をした見目麗しい十八歳の主人は、苦しそうにその顔を歪め、さぎりを見る。

 この優しい主人は、さぎりに、ここから逃げろと言っているのだ。



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