異国の地で出会った財閥御曹司は再会後に溺愛で包囲する
 女の子が何人か輪になってしゃべっている中で、純真を絵に描いたような翠々は誰よりも輝いていた。意識しすぎなのかもしれないが、俺にはそう見えた。
 準備を進めているときも、みんなでコンロを囲んでいるときも、俺は積極的に翠々のそばへ行って話しかけた。
 焼けた肉や野菜を皿に取り分けて渡すと、うれしそうににこりと微笑む彼女が本当にかわいくてたまらなくなる。
 もっと話したい、触れてみたい。こんなに心を揺さぶられたのは初めてだ。

「ありがとうございます。琉輝さんはやさしいですね」

「翠々には特別かな」

「……え?」

 彼女は一瞬固まり、そのあと遅れて意味を理解したのか恥ずかしそうに頬を染めてうつむいた。
 俺としてはわかりやすく気持ちを示しているつもりだ。少し鈍感な彼女にも届くように。

「SNSをやってるならフォローし合わないか?」

 そっとスマホを差し出して提案すると、翠々は迷うことなく即座に応じてくれた。
 よし、これでいつでもダイレクトメッセージで連絡を取り合える。そう思うとうれしくて自然と顔が綻んだ。

「琉輝さんは風景の写真が多いんですね」

「綺麗な場所を撮影すると載せたくなるんだ」

「私は食べ物ばっかり。恥ずかしいです」

 たしかに翠々のアカウントはコーヒーショップの新作のフラペチーノや、友達と食事をした際の料理写真が多い。
 それはそれで女の子らしくてかわいいと思うし、ほのぼのとした彼女の日常を垣間見ることができる。

「片づけを急ごう。日が暮れてきた」

 夕焼けを浴びてオレンジ色に染まった彼女が綺麗で、もっと見ていたかったけれど、ぼうっとしていたらあっという間に真っ暗になる。
 その予測は見事に当たり、作業を終えるころには藍色に変わった空に星が出ていた。

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