異国の地で出会った財閥御曹司は再会後に溺愛で包囲する
***

 一週間後の夕方、仕事を終えた私は再び空港へ赴いた。
 クリーニングに出していた琉輝さんのスーツの上着とハンカチを返すために。

 先ほど琉輝さんには会社に届けるとメッセージを入れたけれど、仕事が忙しいのか既読が付かない。
 仕方がないので、私はスターレイルエアのサービスカウンターに立ち寄ることにした。
 空港での実務を担っているスターレイル・エアポートという会社だと言っていたから、おそらくここにいるスタッフは彼の同僚だろう。

「あの、すみません」

 カウンター内におずおずと声をかけると、綺麗な営業スマイルを貼り付けた女性スタッフが対応してくれた。

「白川といいます。こちらの会社の鳴宮さんにこれを渡していただきたいのですが」

 ペーパーバッグを掲げながら伝える私に、女性は一瞬考え込んだあと再び笑みを向けた。

「鳴宮……どちらの部署かわかりますか?」

「え、部署……」

 そこまでは聞いていなかったから返答できずに困ってしまう。こんなことなら名刺をもらっておけばよかった。

「えっと……鳴宮琉輝さんなんですけど」

「弊社の社長でしょうか?」

「……は?」

 なにを言っているのかわからなくて、女性スタッフの顔を呆然と見つめた。
“琉輝”という名前は珍しいと思って伝えたのだけれど、彼女はいったいどういう勘違いをしたのだろう?

「違うと思います。私の言う鳴宮さんはまだ二十代の男性なので、社長さんではないですよ」

「失礼いたしました。しかし鳴宮琉輝という名前の社員はほかには……」

 私がカウンターを間違えたのかもしれないと混乱したが、ここはスターレイル・エアポートで間違いないし、彼女が付けている社章は琉輝さんがしていた物と同じだ。

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