花言葉〜青い春〜
時刻は午後6を過ぎた頃だった。桜は6時半にはバイトを上がるので、あと30分程で終わりだった。
今日も一日平穏に終わると思っていたのに……
桜はカウンター席から、店内の一番奥の席を見やった。
店はそんなには広くなく、カウンター席が6席、テーブル席が4席で、カウンター席に立てば、店内を見渡すことごできた。
あの人……菫ちゃんの担任だよね……?
店の奥の席に紺色のスーツを着た男と白ののブラウスに、レモンイエローのタイトスカートをはいた女が向かい合わせで座っている。
最初は男一人だったのだ。優雅にアメリカンコーヒーを飲んでいた。すると突然、ハイヒールの音を響かせて女が乗り込んできたのだ。
戸惑い慌てる男に女は今にも噛みつきそうな形相で椅子に座った。
「桜ちゃん、一応彼女にお水とメニューを。」
マスターが突っ立つ桜に声をかけてくる。
私がー?完全に修羅場ですよね?とマスターに突っ込みたかったが、そこは雇われている身。
桜は黙ってメニューと水を手にした。
絶対、菫ちゃんの担任の伊勢谷先生だよー……でも知らないフリをしよう。
桜は伏し目がちにテーブルに近付き、ガラスコップを置いた。その瞬間だった。