花言葉〜青い春〜
桜が置いた水を女はすぐさま掴んで、男にぶっかけた。
「冷たっ!!」
男の叫び声と同時に髪から雫が落ち、紺色のスーツに染みができ始める。
やっぱり修羅場じゃん!と桜は思い、台拭きを取りに行くフリをして、とりあえず定位置のカウンター前まで戻った。
「千鶴のバカ!!結局、私のこと好きじゃなかったんでしょう!?」
「……。」
「私は千鶴のために、いつもご飯を作って帰りを待っていたのよ!なのに、ある日突然帰って来なくなって……他の女のところに行ってたんでしょう?」
「……違うよ。一人になりたかっただけだから。」
狭い店内では、二人の会話は嫌でも桜の耳に届いてくる。
「もう知らない!私、出て行く!勝手な男なんて懲り懲り。」
「どうぞ。」
そう伊勢谷が言った瞬間、女は残っていた水も全部引っ掛けて、荒々しく店を出て行った。