花言葉〜青い春〜
「伊勢谷ちゃん、ここ分からないんだけど。」
成海が教科書を広げて指差した場所は、先程伊勢谷が菫に教えたページだった。
「ここ、やっぱり難しいんだねえ。委員長にも今教えたんだ。」
俺の教え方が悪いのかなと、伊勢谷が首を傾ける。
「やっぱりいいや、伊勢谷ちゃん。俺、すーちゃんに教えてもらうわ。」
突然話を振られ、成海にぱっと手をとられた菫は、訳が分からないままに成海を見上げた。
「すーちゃん、頭いいんでしょ?」
何かを悟ったような目で見下ろす成海に、菫は椅子から立ち上がり、手を振りほどいた。
「わ、私、あんたになんか勉強教えないから。他の子に聞いたらいいじゃん。成海はモテるんだから。」
「すーちゃんに教えてもらいたいんだけど。」
菫は一歩後退り、自分の鞄をつかみ、いつでも逃げ出せる体制をとった。
こいつやっぱり変だ。てか、先生ともう少し一緒にいたかったのに……
「委員長、教えてあげな。」
伊勢谷はペンケースと机に立てたファイルを抱え、席から立ち上がった。
「俺、これから学年会議だから。ここは鍵を閉めないとダメだから、悪いけど場所は変えてね。宮田、ちゃんと委員長の話聞けよ。」
先生……私……声を出そうと思ったけど、菫はその場に固まることしかできなかった。