花言葉〜青い春〜
「さあ、ハンバーグが来るまでに英語教えてください。」
鞄から英語の教科書を取り出す成海に、菫は不意に落ちない気分だった。
「ねえ……」
「何?」
「さっき何で?」
「何が?」
「彼女じやないって言ったでしょ。学校のときと何か違う。」
何かって何?と聞かれたら、菫にも説明はできなかったが、雰囲気というか態度というか、あの学校みたいな軽いノリがない。
「そんなもんじゃない?」
「えっ?」
「全部同じ自分じゃないないでしょ。場所によって、人なんて多少なりは雰囲気もテンションもキャラも変わるよ。」
「……。」
「すーちゃんだって多分そうだよ。すーちゃんの双子のお姉さんだって、伊勢谷ちゃんだってね。目に見えるものが全てじゃないよ。」
「……。」
「それに学校では、色々牽制しとかないと、すーちゃんを取られそうだからなあ。」
成海が冗談めかしてクスクス笑ったが、菫は笑うことも、そういうのは迷惑と怒ることもできなかった。
一瞬。ほんの一瞬。成海は表情を曇らせて、すごく悲しそうな顔をした。