完全包囲 御曹司の秘めた恋心
「ゲイルさん?」

「貴女の人生はまだまだこれからだ。そのこれからの人生に、僕も付き合わせてもらえたら嬉しい」

彼の聡明な瞳に吸い込まれそうだ。

「あ、あのっ、それは……どういう意味、でしょうか……」

「その通りの意味です」

これはもしや、プロポーズ? いやいや、出会ってその日にプロポーズ? それはありなの? 私、どう答えればいいの?

答えを見つけられず視線が揺蕩う。

彼がそっと頬から手を離し、フッと息をついた。

「今日は大切な日です。環奈さんにとって忘れられない日になるよう、僕がしっかりエスコートさせてもらいます。環奈さんにはただ、楽しんで欲しい。何も考えず、思いっきり楽しんでもらいたい」

「私は、既に楽しませていただいています。もっと、楽しんで良いとうことですか?」

彼は深く頷いた。

「ありがとうございます、ゲイルさん」


食事を終え競技場に戻ると、目の前で繰り広げられる選手たちのプレイを特別席で観戦させてもらった。生で見るトップアスリートは刺激的で、抑え込んでいた私の中の野生が目を覚ます。
日本のメダルがかかった男子400mリレー決勝では、興奮を抑えきれず身震いが止まらない。
最終走者がバトンを受け取り加速していく。
目の前でしか味わえないスピードと熱狂に私は我を忘れた。日本選手が3位でゴールし歓喜が最高潮に達する中、選手が日の丸の旗を羽織りグランドを一周する。

拍手で迎えなきゃ! 

ようやく平静を取り戻した時、私は気がついた。

抱き合っている! え⁉︎ 私、抱き合ってる!!!

ゆっくりと顔を上げると、端正な顔が笑顔で私を見下ろしていた。

私は慌てて飛び退く。

「も、申し訳ありません!」

穴があったら入りたい。顔が燃えるように熱い。隠すように顔を手で覆った。
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