完全包囲 御曹司の秘めた恋心

真実

再び黒塗りのセダンに乗せられやって来たのは、先日オープンしたばかりの高級ホテルだ。
このホテルに引けを取らないオーラを放つ彼の後をついて行く。フロントはスルーだ。
全スタッフが彼に会釈する。

顔パス? 本当にこの人は何者なのだろう。

彼がエレベーターホールのボタンを押すと、すぐに扉が開いた。
乗り込んだエレベーターはシースルーになっていて、上階に向かうほど東京の夜景が広がっていく。

「うわぁ……」

景色に目を奪われていると、あっという間に最上階まで昇ってきた。どうやら直通だったようだ。

先に降りた私は、彼が降りるのを待ち、そのあとをついて行った。

そして、ある一室のドアの前で立ち止まる。

え!部屋⁉︎ いきなり部屋⁉︎ 私はどうすればいいの?

「こ、こ、ここは、部屋、ですよね?」

「そうです」

「あ、あのっ、こここで何を……」

「安心してください。貴女の許可がなければ、ここから先、指一本触れません」

「はい……」

彼がドアノブに手をかけ、ドアを開け放つ。

「さぁ、どうぞ」

私は促されるまま部屋に足を踏み入れた。

「奥へ進んで」

照明は消えたままなので、そのままゆっくり部屋の奥へと進む。
張り巡らされたガラス窓の向こうには、世界大会特別仕様にライトアップされた東京タワーが、圧倒的な存在を放ち、宝石のような夜景が一面に広がっていた。

思わず感嘆の息が漏れる。

「キレイ……」

「環奈さん」

ガラス窓には、わたしに重なる彼の姿が映っている。そして、彼の穏やかなボイストーンが、私の心臓を激しく波打たせた。

ゆっくり振り返ると、薔薇の花束を胸元に抱えた彼が私を見つめている。

「お誕生日、おめでとう」

「え! 今日が誕生日って……」

「言ったでしょ、リサーチ済みだって」
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