完全包囲 御曹司の秘めた恋心
彼が歩み寄り、花束を私に手渡す。

「ありがとうございます。本当に素敵な花束」

「その貴女の笑顔は、ここから見える夜景のようです」

「それは褒めすぎです」

「いいえ、貴女は昔から輝いていた」

「えっ⁉︎」

昔から? どういうことなのだろう……

「環奈さん、座りましょうか」 

彼がソファーに座るよう促してくれたので、ゆっくりと腰を下ろした。彼は私に背を向け、窓の方に歩いていく。その光景は、芸術作品のように美しい。

しばらく佇んでいた彼が、私の方へ視線を戻し、ふぅっと浅く長い息を吐いた。

「環奈さん、俺は、熊野御堂颯介です」

ん? 今、俺といった? しかも熊野御堂?
颯介?… そうすけ……

「そうすけ!!!⁉︎」

「そう、颯介」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」

今、私の頭の中は大混乱だ。
颯介ってあの颯介だよね?
全く気づかなかった。というか、全くの別人としか言いようがないほど、目の前の彼は完璧な王子様。
私が知っている人の不幸を冷笑する最低最悪な生き物がこの人?
人ってそんなに変わるものなの?
……って、変わるかもしれない。私自身がそうであるように……

私は何とか混乱を治め、彼と向き合った。
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